転職をする際に退職金を貰える?損しないための退職金のあれこれ

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退職金とは退職した労働者に対して支払われるお金です。しかし、退職金は会社を辞めれば必ずしも支払われるわけではなく、受け取るためには各種条件を満たす必要があります。

本記事では、退職金の概要や、転職時の退職金の受給、税金などについて解説します。

目次

退職金とは

退職金の正式名称は退職手当といいます。

退職金は自社にこれまで貢献してくれた労働者に対して、功労をねぎらう意味を込めて支払われます。

ただし、民間企業には退職金制度を設けることが義務付けられているわけではありません。そのため退職する労働者に退職金を支払うかどうかは各企業の判断に委ねられています。

退職金には2種類の受け取り方法があります。

退職一時金

退職一時金とは、会社から退職時に退職金が一括して支払われる制度です。退職金規定に従って支払いが行われるため、企業の経営状況に左右されることなく支払いが確約されています。

また、退職一時金には税制面での大きな優遇があるため、金額にもよりますがほとんどの場合は非課税となります。

企業年金

企業年金とは会社負担で公的年金に上乗せするお金です。

日本の年金制度は3階建てになっており、1階は国民年金、2階は厚生年金、そして3階が企業年金となっています。

企業年金の確定拠出年金では労働者自身が掛け金を決めて積み立てを行うため、同じ年数働き、役職が同等の労働者間であっても受け取れる金額に差が出ることもあります。

ただし中途退職した場合、企業年金の取り扱いが少々困難になります。労働者は一時金として受け取る、もしくは転職先の企業年金に持ち運ぶかを選択します。

退職金について確認すべきこと

退職金は老後や退職後の生活を支えるための重要なお金ですが、前述のとおり全ての労働者に支給されるわけではありません。そのため、退職金について事前に把握しておかなければならないポイントがあります。

以下、退職金について確認すべき2つのポイントを紹介します。

退職金がない企業がある

前述したように、退職金の支払いは企業に義務付けられているわけではありません。

厚生労働省が2018年に公表した「就労条件総合調査 結果の概要」によると、従業員数1,000人以上の企業の92.3%が退職金制度を導入している一方、従業員数30人から99人の企業は77.6%しか退職金制度を導入していません。

規模が大きな企業で働いている方であれば退職金が支給される可能性が高い一方、小規模な企業で働いている方は退職金を支給されない可能性も十分あるといえるでしょう。

参考:就労条件総合調査 結果の概要

退職金を貰えないケースがある

また、退職金制度を設けている企業であっても、退職金が支給されないこともあります。就業規則で定められている条件を満たしていない場合は退職金が支給されなかったり、支給額が大幅に減額されたりします。

例えば、以下のケースでは退職金が支払われません。

・退職金制度で定められている就業年数に達していない
・自己都合退職で、なおかつ在職期間が一定の期間に達しない
・問題を起こすなどして懲戒解雇された

退職金の支給が認められる在籍期間は企業によって異なりますが、1年以上の在籍を必要とする企業は多いです。

また問題を起こしたり、周囲に迷惑をかけたりして退職する場合や、退職時のルールを守らなかった場合も退職金を支給しない企業があります。

転職の際退職金はいくら貰えるのか

転職を考えている方にとって、退職金がいくら支給されるのかは今後の生活費にもかかわる重要な問題でしょう。東京都産業労働局のデータを参考におおよその退職金額について説明します。

ここでは退職一時金のみを考慮した、自己都合退職金額を紹介します。

高卒で10年勤続した人が退職する場合、約80万円支給されます。また、高卒で30年間勤続した人であれば、支給額は約483万円です。

勤続年数10年の大卒の場合は約98万円支給され、勤続年数30年の大卒は約602万円支給されます。

参考までに、定年退職時に支払われる退職金の平均は高卒で約933万円、高専・短大卒で924万円、大学卒で987万円です。

参考:東京都産業労働局

退職金に税金はかかるの?

退職金は企業から受け取るお金の中でも金額が大きいです。そのため、納税額も大きくなるのではないかと不安に思う方もいるでしょう。

しかし、国税庁は退職金に課される税金負担が軽くなるよう各種控除を設けており、退職金に課される税金はそこまで大きな金額にはなりません。

特に、退職所得控除を受けることで、差し引かれる税額を抑えられます。ただし、この控除を受けるには退職所得申告書を会社側に提出する必要があります。

退職所得控除額の算出方法は以下の通りです。退職一時金が控除額の金額以下の場合は非課税となります。

・勤続年数 20年以下
退職所得控除額:40万円×勤続年数
※合計が80万円に満たない場合は80万円

・勤続年数 20年超
退職所得控除額:800万円+70万円×(勤続年数-20年)

出典:国税庁「退職金にかかる税金」

退職金の請求方法

退職金を受給できる条件を満たしているはずなのに、退職金がなかなか振り込まれないというケースもあるかもしれません。

退職金制度がある企業であれば、ミスマッチなどが理由で退職する場合であっても、退職金は賃金の後払い的要素もあるため従業員には退職金を請求する権利があります。

ただし、この後詳しく解説するように、自社に退職金制度があっても請求が難しいケースもあります。

以下、状況ごとに退職金の請求方法について見ていきましょう。

会社都合、もしくは定年退職のケース

会社都合、もしくは定年退職によって会社を去る場合、請求を行わなくても退職金が支払われることが一般的です。退職の際は退職金がいつ振り込まれるのか社内規定などで確認しておきましょう。

ただし、外部の運用機関を利用している場合などでは、退職金請求書の提出が必要になるケースもあります。

懲戒解雇のケース

懲戒解雇とは、労働者側に非があったために解雇されることです。例えば、社内規定に大きく反した行為をした場合や長期の無断欠席、特別な事情がないにもかかわらず遅刻を繰り返した場合などが該当します。

懲戒解雇の場合、退職金が支払われるかどうかは企業によって異なります。社内規定に「懲戒解雇の場合においては支給しない」などの明記がなければ、支払われない場合は請求できます。

一方、社内規定に「懲戒解雇の場合は支給しない」と明記されている場合は、不支給に該当する懲戒解雇であるのか確認してみましょう。

社内規定に懲戒解雇における不支給条項があったとしても、完全な不支給とはならないケースも少なくありません。会社への貢献度や勤続年数、解雇の原因など諸々の要素を含めて判断されます。

自己都合のケース

自己都合で退職する場合、円満退職できれば、会社都合退職と変わらない手続きを行うことになります。退職金の不支給について心配することはないでしょう。

ただし、特別な事情がないにもかかわらず突然退職する場合や、退職における適切な手続きを怠った場合などは、退職金がスムーズに支払われなかったり、減額されたりする場合もあるようですので注意しましょう。

まとめ

退職金は企業からこれまでの労働に対するねぎらいや感謝の意味を込めて支払われるお金です。労働者にとっては老後資金に充てたり、転職先が決まるまでの生活費に充てたりと、今後の生活を支える上での重要な資金になります。

ただし、退職金は全ての労働者に支払われるお金ではなく、退職金を受け取れるかどうかは企業によって異なります。そのため、ライフプランニングを行う際は、退職金の有無や支給条件などについてきちんと理解しておくようにしましょう。