早期退職の実施による企業側のメリットとデメリット
コロナ禍で先行きが不透明な情勢のなか、業績悪化や事業再構築による人員削減のために早期退職を募る企業が増えています。
しかし、早期退職の募集にあたっては退職をめぐり従業員とトラブルに発展するリスクもあるため、慎重に進めていくことが重要です。
この記事では、早期退職における企業側のメリット・デメリットを踏まえて、円滑に進めるためのポイントを解説します。
出典:厚生労働省『新型コロナウイルス感染症に起因する雇用への影響に関する情報について』
目次
- 1.早期退職制度とは
- 2.希望退職制度を実施するメリット・デメリット
- 2.1.メリット
- 2.1.1.①人件費を削減できる
- 2.1.2.②円満に人員調整ができる
- 2.1.3.③企業組織を再編成できる
- 2.2.デメリット
- 2.2.1.①優秀な人材が退職する可能性がある
- 2.2.2.②退職金の支払いにコストがかかる
- 2.1.メリット
- 3.希望退職を円滑に進める4つのポイント
- 3.1.①応募条件を明確にする
- 3.2.②退職金の支払い内容・条件を定める
- 3.3.③応募を強制させる行動・言動をしない
- 3.4.④退職準備・再就職をサポートする
- 4.まとめ
早期退職制度とは
早期退職制度とは、定年退職を迎えるよりも前に従業員が自主的に退職する制度のことです。早期退職制度には以下の2つの制度があります。
①希望退職制度
希望退職制度とは、業績悪化や組織の再編成などによる人員削減・調整を目的に希望者を募る制度です。
企業側の都合で従業員の自主的な退職希望を募るため、退職にあたっては希望者に対する優遇措置が求められます。
②選択定年制度
選択定年制度とは、企業の一般的な定年よりも前の45~55歳で定年退職する制度です。
定年退職の年齢を従業員が選択できるため、自己都合の退職として扱われます。勤続年数に応じて退職金の優遇措置を設けているケースもあります。
この記事では、企業都合で早期退職を募集する“希望退職制度”について取り上げます。
希望退職制度を実施するメリット・デメリット
企業都合で行う希望退職制度の実施は企業にとってメリットばかりではありません。導入する前にメリット・デメリットを理解しておきましょう。
メリット
はじめに、希望退職制度を実施する3つのメリットを紹介します。
①人件費を削減できる
退職した従業員の人件費を削減できるのは、希望退職制度の大きなメリットの一つです。
業績悪化や事業縮小などに伴う人件費の負担を低減することができます。人員を整理することにより、人件費の最適化を図るケースもあります。
②円満に人員調整ができる
従業員と合意したうえで退職してもらうため、円満な退職へと運びやすいという利点があります。
企業側の一方的な解雇よりも従業員とのトラブルにつながりにくいといえます。
③企業組織を再編成できる
退職によって従業員のポジションや役職を整理することも可能です。
組織の再編成・スリム化などを行うことで企業の活性化につながります。また、人員構成の偏りを解消することで企業の若返り効果も期待できます。
デメリット
次に、早期退職を実施する2つのデメリットを見ていきましょう。
①優秀な人材が退職する可能性がある
早期退職の募集によって優秀な人材が退職してしまうリスクがあります。
利益に貢献する人材の退職は組織の生産性低下を招き、売り上げにも影響を及ぼしてしまうおそれがあります。
②退職金の支払いにコストがかかる
希望退職制度では、退職者への優遇措置として退職金の支払いが行われることが一般的です。
退職者の人数が多くなるほどコスト負担が大きくなることを想定しておく必要があります。
希望退職を円滑に進める4つのポイント
従業員とのトラブルを防ぎ、双方円満に希望退職を実施するためのポイントを4つ解説します。
①応募条件を明確にする
手続き上のトラブルを防ぐため、または優秀な人材が流出するのを防ぐためには、応募条件を明確に設定しておく必要があります。募集要項で設定する項目には以下が挙げられます。
▼募集要項で記載する項目
- 人員削減・調整する人数
- 応募期間
- 退職予定日
- 年齢
- 部署
- 業務
応募期間や退職予定日、各種条件を明確化しておくことで「応募者が集まりすぎた」「退職日の折り合いがつかずに応募を諦める」などのケースを防ぐことができます。
②退職金の支払い内容・条件を定める
希望退職制度では、退職者への優遇措置として退職金を支払うことが一般的です。退職金の支払いは従業員とのトラブルにつながりやすいため、以下の項目を定めておく必要があります。
▼退職金について定める項目
- 退職金の額(定年退職時の退職金の何%か)
- 退職金の割増率
- 退職金の支給日
応募用紙への記載に加えて面談時に説明を行い、従業員の間に認識の齟齬(そご)がないようにすることが重要です。
③応募を強制させる行動・言動をしない
企業側の都合が前提となりますが、早期退職はあくまでも従業員の任意となるため企業が強制することはできません。
退職に応じないことを理由に解雇や人事異動を行うことは法令違反にあたります。話し合いによる円滑な退職を進めるのがポイントです。
④退職準備・再就職をサポートする
従業員にとって早期退職はリスクの大きい選択といえます。従業員が納得したうえで退職してもらうには以下のような退職前後のサポートが不可欠です。
▼退職前後のサポート例
- 退職準備・求職活動のための特別休暇を付与
- 再就職のあっせん(関連会社や取引先など)
- 再就職支援サービスの活用
企業側のサポートによって退職前後の収入や仕事を確保することで早期退職の希望者を募りやすくなります。
まとめ
早期退職制度の一つである希望退職制度は、人件費の削減や組織の若返りなどの効果が得られる一方で、優秀な人材の流出、従業員とのトラブルに発展するなどのリスクがあります。
双方円満な退職につなげるためには、募集条件や退職金について明確化するとともに、希望退職する従業員のフォローを行うことが重要です。
『エンリージョン』の再就職支援サービスでは、退職者との面談、求人提案など、内定に至るまで早期退職希望者を手厚くフォローいたします。早期退職希望者の不安を和らげることで、企業と良好な関係を維持しつつ円満な退職へとつなげられます。
希望退職制度の導入を予定している企業さまは、再就職支援サービスの活用をぜひご検討ください。